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ちなみに紅派とは、仏師の流派の一つである。
父子相伝を基とし、晴れて一人前となれば父から“紅海”を譲り受ける。いかにも大層な号を名乗ってはいるが、もとを正せば下請け番匠(ばんしょう・大工の前身)だった先祖が、勝手に興したものだ。
僧籍にある正統な仏師ではない。本業だけでは食えず、寺社や長屋の修復、細工物の製作、時には提灯の張替なども行っていた。雑多な仕事を二束三文の賃金でこなす、どこにでもある町の仏師屋だ。
車輪を廻る二十日鼠のごとく、日々の糊口を凌ぐだけで精一杯であった。
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