負け犬の雄叫び

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妻と出会ったのは、大学のサークル活動だ。俺に一目ぼれだったらしい。彼女から告白され、交際も順調で、大学を卒業してすぐに結婚、それから子供も授かり、人生は上手くいく、はずだった。 俺が就職したのは、いわゆるブラック企業だった。どれだけ働いても仕事は終わらない。上司からの暴言は日常茶飯事、心も体もぼろぼろだった。ただ、辞めることができなかったのは、給料が良かったからだ。家には幼い娘がいる。ここで職を変えるなんてとてもできない。家族のため、そう思って、どんなに辛くても耐えてきた。妻もきっと理解している。そう信じていた。いや、そう信じるために、家族から目を背け、仕事に没頭していた。家族のためと言いながら、俺はただ、家族を犠牲にしていただけだった。
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