負け犬の雄叫び

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ベランダから、朝日が差していた。俺はベッドから立ち上がる。体がだるい。昨日は一睡もしていない。それなのに、体の奥はまだ興奮していた。 昨日、あれからまっすぐ家に帰った。ただ感情的に行動してしまい、あらゆる仕事も放りだしてしまった。後悔は、していない。むしろ、言いたいことが言えてすっきりしている部分もある。しかし、俺は会社を辞めなければいけないのかと思うと、気が沈む。 しんどいことばかりの会社だったが、ここまで続いたのは、家族のためだけというわけではない。この仕事が好きなこともあった。上司に恵まれず、残業ばかりだったと言えども、やりたいことをやれたからここまで続けてこれたし、少なからず会社に恩を感じている。しかし、そんな想いも、全てぶち壊すことをしてしまった。 俺の視線が、机の上の封筒にいく。その封筒には、辞表、と書かれていた。今まで、幾度となく、辞めたいと思った。しかし、本当に辞めるとなると、怖くもあり、寂しくもあり、そして、申し訳なかった。 俺は辞表を手に取り、それをじっと見つめる。大きく息を吐き、その封筒を会社の鞄へと詰めた。
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