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授業が終わるまで2人は保健室で過ごした。
雅美の顔色はとてもよく結人は安堵する。
トントンと扉を叩く音がして結人はベットから降り扉を開ける。
「雅美君体調はどうかな?」
一実先生が穏やかな笑みを浮かべる。
「大丈夫です。ご心配おかけしました。」
「そうか、なら良かった。2人とも今日は休暇届け出しておいたから、落ち着いたら寮に戻っていいからね。あっ鍵は机の上に置いておいてね。」
「はーい。九条のことは責任もって部屋へ連れて帰るから心配しないでね。」
結人が告げると一実先生はニコニコしている。
「じゃあ宜しくね。これからデートなんだ忘れ物しないようにね」
保健室のドアはスイッチの切り替えで、オートロック仕様になっていて、出たら入れないようにされている。
どうやら一実先生はさっさと出かけていくようだ。
「俺達も帰ろうか?」
結人が雅美の身体を抱き起こす。
そしてブレザーのジャケットを羽織らせる。
「行こうか」
「はい。」
結人は個室の鍵を締めると。
テーブルの上に置いた。
それから鞄を取りに2人は教室へ戻った。
生徒たちはもうすでに帰ったあとで静かになっていた。
ただ結人の机の周辺だけが騒がしくなっていた。
無数の紙袋が散乱している。
チョコレートを直接渡せなかった為このような形になったようだ。
判っていたとはいえ雅美の顔色が凍りついたように青くなる。
それに気づいた結人はそっと雅美の身体を抱き寄せる。
「九条。あのチョコ全部九条にあげる。」
「えっ?」
「旦那が貰ってきたチョコは奥さんに渡すだろ?だからアレ全部九条のだよ。」
そう言って雅美の頬にチュっとキスをした。
奥さん?自分が栗原の?雅美の顔が真っ赤に染まる。
そんな愛らしい姿をみて結人は満足げに笑った。
「帰ろうか?」
結人は雅美の鞄を持ってあげて片手を差し出す。
その手をキュッと雅美は握りしめた。
「チョコはどうするのですか?」
「後で京汰に届けもらうようにしておくから大丈夫。」
結人は悪怯れることなくその場を後にする。たくさんの子が結人への思いを託したチョコレートは無惨にも捨て置かれたような状態になった。
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