チョコレートと僕(学生時代)結人✕雅美

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今日はバレンタインだ。 ある意味男子高といっていい月華学園だが、イベントごとはなにかと盛大に行われているこの学園、今日も学生達はソワソワしている。 学園にある金の時計の下でチョコレートを渡し愛の告白をしたものは、永遠の愛を手に入れられるとか。 誰が作ったおとぎ話か伝説か知らないが、それをせっせと実行しようとする輩が後を絶たない。 ここでも1組のカップルが何やらやっている。 「あのさ。雪人チョコレート好きだよね、これ買うのに1時間も並んだんだ受け取ってくれる?」 「菖蒲。菖蒲からのチョコなら、たとえ5円のチョコだろうと俺は嬉しい。1時間も並んだのか?寒くなかったか?」 「凄く美味しいってテレビでやってたから雪人に食べて欲しくて。」 顔が少し赤いのは寒さだけではない。 雪人はチョコレートを受け取ると自らもポケットからチョコレートを取り出す。 「俺も菖蒲のチョコ買ってあるんだ。」 「わぁーこれ僕の好きなやつ♪ありがと雪人」 2人はお互いのチョコレートを大事そうに握り幸せを噛みしめる。 「帰ったら一緒に食べようね」 周りが賑やかしいのには気にもとめずまるで世界は2人だけのものといったそれだ。 その横を雅美が通り過ぎようとする。 「九条。おはよう」 「雅おはよ。何も普通に通り過ぎなくてもいいだろ?」 2人は少し不機嫌そうに言う。 「だってその。邪魔しちゃ悪いと思って。」 雅美は2人の顔を交互にみる。 「九条の分もちゃんと買ってあるから後で渡すね。」 菖蒲はニコニコと悪びれる素振りもなく言う。 友チョコだから当然といえば当然だが。 恋人がいる側でそれはまずいんじゃないかなと雅美は思いながら雪人の顔を見上げるも、雪人もまたニコニコしている。 「俺も雅の分あるから後であげる。楽しみにしとけよ。」 そう言う雪人に今度は菖蒲の顔色を伺うも菖蒲もまたニコニコしているのだ。 「有難うございます。」 雅美はそう告げるとなんだかちょっと気まずそうになり、その場を駆け足で去ろうとした。 「九条、雪振った後だから気をつけて。」 後ろから菖蒲がそう告げると。振替ってこくんと頷いて。こんどはゆっくりと歩き出した。 幼なじみの2人の姿、雅美は少し羨ましく思う。 鞄の中、チョコレートを入れて来たものの、あんなふうに自分は結人に堂々と渡せる勇気がない。 恋人?同士になって半月近くたってもまだどこか実感がわかない。 幼い頃から好きだった結人に思いが通じた今も、この雪のように結人の想いはすぐに溶けて消えてしまうのではないかと雅美は不安にかられるのだった。
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