チョコレートと僕(学生時代)結人✕雅美

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教室に戻るとホームルームが始まっていた。 「こら3人遅刻だぞ。」 担任の高野先生が早く席につくように促す。 「すいません。九条君の体調がすぐれなかったので様子を見ていました。」 先生はバッと雅美に近づく。稀血の雅美に何かあったら一大事だ。先生の顔が青くなる。 「大丈夫か九条君?熱はないか?吐き気は?駄目じゃないか体調が悪いなら欠席しなくちゃ。おい保健委員九条君を保健室へ連れて行ってあげなさい。」 先生は雅美の隣に屈んで顔色を伺う。 少し青白くみえる。 「やっぱり先生が九条君を連れて行くので1限目は自習で。」 それを遮るように1人の生徒が席をたつ。結人だ。 「先生俺が九条を保健室に連れていきます。貧血なら俺の血が役に立つでしょ。」 結人は雅美に近づくと寄り添うように身体を支える。 周りの学生達が羨ましそうにざわつく。 そんなことお構いなしに結人は雅美の腰を抱き寄せて立たせる。 「歩ける九条?俺に寄りかかって良いからね。」 耳元で囁かれて九条の顔が赤くなる。 違った意味で意識が遠のきそうになるのを感じる。 「九条。大丈夫?廊下まで我慢して」 ふらつくのを見てられず雪人が手を差し伸べようとした時だった。 「触るな。九条は俺のだ。」 ピシャリと結人が言い放ったのだ。 凛としたその口調に雪人も周りもただ呆然とするしかなかった。 廊下まででると、さっと雅美をお姫様抱っこした。小さいのに力強い結人。 「しっかり捕まってて」 雅美はそっと結人の首に手を回した。 「すぐに保健室に連れていってあげるからね。我慢するんだよ」 優しい口調で結人は言う。 病気じゃないのにこんな風に心配されて、なんだか申し訳ない気持ちが押し寄せてくる。 足早に結人は保健室へ歩く。 雅美の心臓がうるさいように騒いでいる。 保健室の前に立つと自動でドアが開く。 「先生急患です。」 「取り敢えずベットへ運んであげてくれるかな?」 一実先生は開いてる部屋のドアの鍵を開ける。 何かあっては困るため保健室の部屋の中には3っつの部屋が存在する特殊な造りになっている。 結人はそっと雅美をベットに横たえる。 「少し顔が赤いね熱があるみたいだね。」 一実先生はバイタルを取る。 「少し脈が早いね。呼吸は苦しくない?」 一実先生が雅美を覗き込む。 何も言えずにいる雅美に感の鋭い一実先生は何やら気がついたように、クスッっと雅美にだけ笑顔を見せた。 「少し貧血気味だから暫くここで休んでいきなさい。」 そう言うと今度は結人の方を見て続ける。 「結人君担任の先生には伝えておくから看病お願いしていいかな?そこの冷蔵庫に飲み物入ってるから水分は十分に取らせてあげてくださいね。」 もっともらしいことを言いながら2人を見る視線は暖かい。 「あんまり酷いことはしないようにね」 結人の耳元でポツリと一実先生は告げると鍵を結人に手渡し部屋を出ていった。
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