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夕方のチャイムの音が、うるさいくらいに大きく響く。グラウンドから聴こえていた運動部の掛け声までかき消されていた。チャイムが鳴ったってことは、もう夕方6時ということだ。
「もうそんな時間か」
わかりきったことをつぶやく。もちろん聞いている人もいないけれど、とりあえず言ってみた。図書館の中はいつも通り静かで平和だった。さっきまでキャーキャー騒いでいた女子たちがいたからむっとした顔で注意したらいなくなった。ヒソヒソと話して、「感じ悪」とか言ってたけれど『図書館ではお静かに』という貼り紙がデカデカと入口に貼ってある以上、正当性はこっちにある。
蔵書整理は静かな時にやるのが一番だった。黙々と同じ作業を、ひたすら繰り返す。途中であくびが出たり、退屈に感じるけれど、いつの間にか時間が経過している不思議な作業だ。今日はこれくらいにしておこう。
友だちは部活動をしたり、教室で動画を撮ったり、駅前に行って遊んだりしている。つまりセーシュンてやつを満喫しているのだ。
それに比べて僕は。電子化全盛期。存在意義を問われる図書館で、本棚の点検・整理をしている。実際、図書館の利用率は減っているけれど、本をあるべき場所に戻さない人は後を絶たない。苛立ちもあるけれど、今はただ呆れるだけだ。
こんな地味なことを延々と続けているのには、もちろん、訳があって。それは、僕にとってのセーシュンってやつが、ここにあるからだ。
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