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1.決意
「空が青いぜ。」
上司が風に髪をそよがせながら、芝生の上で空を見上げている。
「鳥はいいよな。自由で。」
はるか上空を飛んでいく鳥を、目を細めて眺めているこの人は、女性社員に言わせるとカッコいいらしいが、俺にはよく分からない。
「俺、どっかトンでいっちゃおうかな。」
必死にはばたくけれど数センチしか浮けていない上司の姿を想像して、にやけてしまう。
「お前、この状況でよく笑えるな。」
冷ややかに言われて、言い訳程度に口を手で押さえた。
「俺が今、空を見上げて黄昏れているのは誰のせいだ?」
俺は首を傾げる。
「黄昏って夕方ですよね?午前中でもOKですか?」
上司が少し苛立ちを見せて、とうとうと語りだした。
「『どうしても競合他社の企業展示見に行きたいんです。準備は全部やりますから同行してください。』って部下が言うから、休日出勤して1時間半もかけて会場来たのに、なんとその部下が日程間違えてたんだよ。この広い会場には競合他社の製品はなくて、どこぞのおばはんたちのお習字が展示してあるんだ。黄昏れるのを黄昏時まで待てると思うか?」
俺が微笑んで「そうですよねぇ」と頷くと、上司はますます苛立った顔で俺を睨んだ。
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