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あれから人前で、『ハナミズキ』を歌うことはなかった。
あの日の空の色は、辞典で調べてみた。
空色、、、勿忘草色、、、露草色、、、
スカイブルー、、、アジュールブルー、、、フォーゲットミーノットブルー、、、。
調べると、この色かな、こっちかなと、辞典のページを何度もめくっては、ドッグイヤーで、印を付けていた。
なんだか、どの色も、私の見た空の色だと思った。
フォーゲットミーノットブルーの色が、どうにも気になった。
この色は、ドイツの悲しい伝統に由来する「私を忘れないで」という意味の花(ワスレナグサ)のような、
淡く儚げなブルーだ、、、「空の色は色んな感情が含まれた色だったとは、、、」
空を見て、どんな色に感じるかは、人それぞれなのかもしれないと、、、ふと感じた。
皆んな、同じ、色ではないのかも、、、。
しかし、この色といい、どんどん、記憶を遡っていく自分がいた。
この色のポロシャツ。
好きな色でよく着ていた記憶がある。
本人は、何色かなんて知るはずもなく、ただの水色だと思っていただろう。
「似合うだろ!」
好きな服を着ると、自信たっぷりに、必ず言っていた。
本気で言っていた。
それまでの、空の色は大好きだったが、今は、微妙に違う、その空の青色に出会うことが楽しみになった。
ハワイへ行った時に着ていたポロシャツ。
コテコテの日本人なのに、なかなか流暢に英語を話す人で、若い頃、航空管制官だったからだ。
気分がいいと、電話に「もしもし」とは出ない。いきなり、英語で話し始める。
慣れてからは、付き合ってふざけていたが、電話の出方で、元気か、不機嫌かもわかるくらいだった。
そう、私の父だ。
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