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「園田さんは札幌出身だったのですね! 私も札幌行ってみたいな~」
「そうか、栞はまだ一度も行ったことがなかったな! よしっ、じゃあ今度父さんと旅行に行くか?」
「いやよっ! 大学生にもなって、父親と2人旅とか勘弁して~」
栞が嘆くように叫んだので、剛と美幸が声を出して笑った。
それからも、楽しい会話は続いた。
剛と美幸は、美術館巡りという共通の趣味がある事が分かった。
2人は今まで行った美術館についての話で盛り上がった。
剛は銀座の画廊にも詳しかったので、
お薦めのギャラリーをいくつか美幸に教えた。
栞はそんな2人の様子を微笑みながら見つめていた。
『園田さんがお父さんの奥さんになってくれたらいいのになぁ......』
ふつふつとそんな願望が湧き上がって来る。
そして、あんなに楽しそうな父の顔を見たのは、母が亡くなってから
初めてかもしれないと思った。
義理の母・弘子と再婚した時は、お見合いという事もあり、
再婚してからも2人はよそよそしかった。
おそらく、ちゃんとした夫婦として機能していなかったので
はないだろうか?
しかし、今目の前の2人を見ていると、
年齢を経ているのに初々しさを感じると同時に、
とてもしっくりとくる。
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