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その夜はとても楽しかった。 剛が、カウンターだとゆっくり話せないだろうという事で、 急遽店を変更して、寿司会席の店へと連れて行ってくれた。 店は和モダンの上品な雰囲気で、とても落ち着く店だった。 陶芸家で、食通としても知られていた北大路魯山人の器に 美しく盛り付けられた料理の数々が、次々と運ばれて来る。 器だけではなく、料理も絶品だった。 そんな料理を堪能しつつ、3人は会話も楽しんでいた。 「お父さん、なんでこんな素敵な店を知っているの?」 「ハハッ、まあ長いこと銀行員をやっていたら、こういった店の1つや2つ、知ってるんだよ」 剛はそう言って笑った。 そこで栞がまた言った。 「札幌にも、こういうお店あった?」 そこで、美幸が反応した。 「札幌にいらした事があるんですか?」 「ええ、以前札幌に単身赴任をしていまして、去年こっちに戻ってきました」 「そうでしたか......」 「札幌には何か?」 「私も以前、札幌に住んでいました。実家も札幌なんです」 「それは奇遇ですねぇ。札幌は本当にいい街ですよね。数年しか住んでいませんが、食べ物や空気は美味しいし、ちょっと出かけると自然は豊かだし、札幌は全てが揃っていてとても便利だし......」 剛の言葉を聞いた美幸は、うんうんと頷いていた。
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