4303人が本棚に入れています
本棚に追加
/527ページ
その週の週末、栞は父・剛のマンションにいた。
栞は父の好きな煮物を作りながら聞いた。
「ねぇねぇ、園田さんとは、その後どうだった?」
栞が入れたお茶を飲んでいた剛は、いきなりゴホッとむせた。
アヤシイ。
栞の父は隠し事が出来ないタイプなので、その反応だけで想像がつく。
「い、いやっ、まあね......」
「まあねじゃわからないよ! 連絡先くらい聞いた?」
栞がダイレクトに聞くと、剛はまたむせて咳き込んでいる。
どうやら、その後何かあったようだ。
「あ、ああ。今度、一緒に美術館に行く約束をしたよ」
「えっ? 本当? わー! 良かったぁ!」
「何が良かったんだ?」
「だって、私、園田さん大好きだから! 園田さんがお母さんになってくれたらなぁ、そうしたらお父さんの事少しは見直しちゃうんだけれどな!」
栞がそう言うと、更に剛はむせていた。
そして、諦めたようにお茶の入った湯飲みをテーブルの上に置いてから
言った。
最初のコメントを投稿しよう!