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「キャーッ!」
それと同時に、受付にいた2人の女性のうちの1人が
栞を目指して走って来る。
そしてもう1人は、クリニックの奥へと向かう。
医師を呼びに行ったようだ。
ぼやけた視界の隅にそんな光景を捉えながら、
栞の意識は徐々に薄れていく。
『助けて......』
栞は涙をこぼしながら、無言の叫びを発する。
その時、傍へ駆けつけた女性が栞を抱え込み、
「大丈夫よ、もう大丈夫だから!」
と、優しく声をかけた。
その声は、栞が小さい頃に亡くなった母の声に、
とてもよく似ていた。
『お母さん......』
栞は苦しそうな表情を浮かべつつ、
口元だけはうっすらと微笑んでいた。
遠のく意識の中で、
母親が来てくれたのだと思っていた。
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