出逢い1

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その時、力強い声が耳元で響いた。 「もう大丈夫だ、安心して! 呼吸に集中しようか! 深く息を吸ったら、ゆっくり吐き出そうね。ふかーく吸って、そうそう、そうしたらゆっくり吐いてみようか。吐く方を長くね! 吸った時の2倍くらいの量を吐くんだよ! そうその調子だ、吸ってー、吐いてー......そうそう、もう一度吸ってー、吐いて―......いいよ、上手だ、そのまま続けよう! はい、吸って―、吐いて―......」 2人の様子を、 待合室にいた患者達が固唾を飲んで見守っていた。 医師は栞を抱きかかえたまま、栞に向かって力強く語りかける。 その声に、栞はなぜかホッとするような安心感を覚えた。 医師の声を聞きながら、栞はほんの少しずつではあるが、 呼吸が落ち着いてくるのを感じていた。 着実に、苦しさが解消されている。 医師は栞に根気よく言葉をかけ続けながら、 背中に手を添えグッと力を込める。 背中を押した後は、 優しくトントンと叩いてからまたグッと押す。 繰り返しの手の動きは、 栞の呼吸に合わせているようだった。
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