出逢い1

6/6

4378人が本棚に入れています
本棚に追加
/527ページ
しばらくその動作を続けていると、 栞の真っ青だった顔に、血の気が戻ってきた。 しかし、身体に力が入らず立ち上がる事もままならない。 「よく頑張ったね、偉いぞ! 少し奥で休もうか」 医師はそう言うと、栞を抱き上げてから奥の処置室へと向かった。 その後ろを、栞の鞄を持った受付の女性がついて行った。 2人の様子を息を呑んで見守っていた患者達は、 皆顔を見合わせて頷き合ったり、ホッとした表情を浮かべていた。 運ばれて行く途中、栞は柑橘系の爽やかな香りを鼻に感じた。 『いい香り......』 栞はそう思いながら、徐々に眠りに落ちていく。 その時、栞の瞳には一筋の涙が伝っていた。
/527ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4378人が本棚に入れています
本棚に追加