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しばらくその動作を続けていると、
栞の真っ青だった顔に、血の気が戻ってきた。
しかし、身体に力が入らず立ち上がる事もままならない。
「よく頑張ったね、偉いぞ! 少し奥で休もうか」
医師はそう言うと、栞を抱き上げてから奥の処置室へと向かった。
その後ろを、栞の鞄を持った受付の女性がついて行った。
2人の様子を息を呑んで見守っていた患者達は、
皆顔を見合わせて頷き合ったり、ホッとした表情を浮かべていた。
運ばれて行く途中、栞は柑橘系の爽やかな香りを鼻に感じた。
『いい香り......』
栞はそう思いながら、徐々に眠りに落ちていく。
その時、栞の瞳には一筋の涙が伝っていた。
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