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「失礼します.......」 栞はか細い声で言ってから診察室へと入った。 そこには、先ほど栞を助けてくれた医師がいた。 白衣を着た医師は、 机のパソコンへ向かい、何かを入力している最中だった。 栞が部屋へ入ると、キーボードを打つ手を止め、 くるっと椅子を90度回転させて栞の方を向いた。 その時、栞は初めて医師の顔を見た。 歳は30代前半くらいだろうか? その医師は、彫りの深い顔立ちをしている。長いウェーブのかかった髪は後ろでお団子風にまとめられている。 『マンバン』というヘアスタイルだっただろうか? 高校生の栞が見ても、セクシーに感じられた。 真っ黒に日焼けした肌は、真っ白な白衣と対照的だ。 そしてなんと足にはビーチサンダルを履いていた。 『お医者様なのにこんなにチャラくていいの?』 栞はそんな事を思いながら、ぺこりとお辞儀をした。 すると、医師は笑顔を浮かべながら言った。 「どうぞ座って下さい」 「失礼します.......」 「僕は精神科医の貝塚直也(かいづかなおや)です。よろしくお願いします」 直也が頭をぺこりと下げたので、栞ももう一度お辞儀をした。
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