宵闇

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『そのすぐ後だよ。真昼から別れようって言われたのは』 「お前、このままでいいの?」  真昼に別れようって言われたから、承諾したのか? それが本心じゃないことだって、分かってたんじゃないのか? 藍二自身の気持ちはどうなるんだよ?  時折通り過ぎる車のヘッドライトが、藍二の身体を透かして通り抜けていく。眩しさに目を細めてから、藍二へと視線を向けた。 「なぁ、俺んとこにこうやって出てきたのってさ、後悔してるからだろ? 死にたくなんてないんだろ? なぁ!」  そこに本当にいるのかいないのかも分からない藍二に叫ぶ。  今にも消えてしまいそうなくらいに、夜の闇に溶け込み始めた藍二が、真っ赤な目をこちらに向けて、半透明な涙を溢した。 『……助けてくれ……雅哉……』  大粒の涙が、次々と流れくるヘッドライトでキラキラと輝いた。 「絶対、死なせねぇ!! 生きろ! 事故ったくらいで死ぬなんて、俺はゆるさねぇからな!」  体力ももう限界だ。ガクガクと震える足に力が入らない。けれど、なんとかペダルを踏み込んで、藍二が事故った場所までようやく辿り着いた。野次馬もまばらで、警察車両も見当たらないし、救急車も停まっていない。  どうなった?
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