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藍二がいなくても世界は何事も無く回っていく。当然、クラスの奴らは驚いていたし、しばらくは藍二の話題で持ちきりだった。だけど、そんな話も時間が経つごとに薄れていった。
そしてまた、いつも通りの日常を過ごし始めるんだ。
「雅哉くん、これ」
「ああ、ありがとう」
真昼はしばらく意気消沈したようになにも喋らなくなってしまっていたけれど、ようやく最近になって笑顔が戻ってきた気がする。
真昼から手渡されたものは、藍二の付けていたピアスだ。
「あいつ何個開いてたんだっけ? 穴」
「んー、確か……五つ? かな。あ、鼻にも付いてた気がする。だから、六つ?」
「穴あけすぎだろ」
フッと笑って、受け取ったシルバーリングのピアスを、最近開けた左耳の穴に装着した。真昼の耳にも、同じように藍二のピアスがついている。
「お前、マジでバカじゃん」
『うるせーな! 言っただろ? 死んだら化けて出てやるって』
「うん、言ったね。でも、やっぱり、死なないでほしかった……」
目の前に現れたのは、あの日見たのと同じ、足のない半透明な藍二の姿だった。
「ごめん、助けてやれなかった……ごめん」
情けなくて、悔しくて、考えると涙が込み上がってきてしまう。
『しょうがないっしょ。あれは。まぁ、酷い事故だったし。希望は薄かったんだ。だけど、お前が血相変えて俺のこと助けてくれようとして、嬉しかった』
頼りなく笑うと、俺から視線を外して藍二は真昼へと向いた。
『ごめん、真昼。また会えて嬉しい。やっぱ俺と真昼は釣り合わなかったってことだよ。悔しいけどさ。これからもずっと見守ってるから、だから、俺みたいな不良にはもう引っかかるなよ。とくに今隣にいる奴にはほんと気を付けろよ』
「はぁ?! なんでだよ」
立ち上がって藍二に近づこうとすると、後ろから真昼に引っ張られた。
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