19人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ごめんね……ごめんね、藍二くん。あたしにちゃんと勇気があったら、あんなこと言われないで済んだのに……」
『気にすんな、真昼。高校卒業して、保育士になるんだろ? 俺は真昼の夢、ずっと応援してるから』
「……うん。頑張る」
『よっし、じゃあ、雅哉と真昼が幸せになることが俺の幸せだから、きっとそれが叶ったら、こうやって化けて出ることもなくなるかもしんないし、それまでよろしく頼むわ』
ケラケラといつものように陽気に笑う藍二。その姿は、俺と真昼にしか視えていない。
「授業中笑かすのだけはやめろよな」
『あれ! めっちゃ面白いんよなー! やめらんねぇ』
「は?! ふざけんなって、マジこの前数学の乃木に睨まれてヤバかったんだからな!」
藍二のピアスを付けると、藍二の姿が視えるようになることに気が付いたのは、真昼だった。
死んだら化けて出てやるなんて、物騒なことを言うのは俺にくらいだろうけど、きっと、藍二は真昼にまだ未練たらたらだ。
確実に会いたくて出てきているのがわかるし、それを拒否しない真昼は、やっぱり藍二のことを想っているからなんだろう。
二人が幸せになることはこの先ないのかも知れないけれど……。
今は、このまま二人のことをそっと見守っていきたい。
『よっしゃ、たい焼き食いにいこーぜー』
「え? 藍二その姿で食えんの?」
『いんや、わかんねーけど』
「なんだよそれ」
真昼と俺の間。
三人分の笑い声がこだまする。
これからしばらく、藍二はそばにいてくれるらしい。嬉しいような、悲しいような。なんとも言えない複雑な気持ちだ。まぁでも、楽しければそれで、良しとしよう。かな。
最初のコメントを投稿しよう!