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寝る前、満月が綺麗だと思って、カーテンを開きっぱなしで窓の外を眺めていた。いつの間にか寝落ちしていたらしい。
月の光が部屋の中を照らしだす。
藍二の身体の下半分が、俺の部屋の背景と同化しているのに気が付いた。
『わりぃ、俺死んだ』
「……は?」
足元から視線を上げれば、いつもの藍二の笑う顔。眉が下がって、俺には頼りなくみえる顔が、ますます頼りなさを倍増させる。
気は弱いくせに髪を染めたり、ピアスを開けたがったり。強がってばっかりいた藍二が、普段となにも変わらない笑顔を向けていた。
『さっきね、バイクでスピード上げすぎちゃってさ、カーブ曲がりきれなくてそのまま崖の下に真っ逆さま。気がついたらここにいた。うん、だから、たぶん死んだわ、俺』
あははと、他人事のように笑いながら話す藍二に、俺は意味がわからずにジッと藍二の姿を見つめる。遠く、救急車と消防車のサイレンが聞こえてくる。
「……今?」
『うん、今、たぶん』
信憑性のない言葉で返事をする藍二に、ため息をついた。
『ほら、お前に言ったじゃん俺。死んだら化けて出てやるって』
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