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蒼然
それは、二日前の話だ。
学校からの帰り道。小さい頃から馴染みのあるたい焼き屋に寄って、俺はあんこ、藍二はカスタードクリームのたい焼きを片手に歩いていた。
「なぁ、見てよこれ」
そう言ってからたい焼きを口に咥えると、ガサゴソと制服のポケットの中を探り出す。目当てのものを取り出すと、たい焼きをまた手に持ち直して、もう片方の手に持っているものをこちらに向けてきた。
「取っちゃった♪」
自慢げに歯を見せて笑う藍二の手元にあるのは、運転免許証。
「は────?!」
思わず俺が伸ばした手をスルリとかわして、藍二は悪戯に笑った。
「誕生日過ぎたから取れたんだよねーっ」
「まっじかよ!! すっげぇ! いいなーってか、教習所いつの間に行ってたの? 最近忙しいとか言って、意味わかんねー行動してたのってこれだったのかよー! ふっざけんなって」
藍二はいつも俺より先を行きたがる。
俺の成績が上がれば勉強して追い抜いていくし、髪染めよっかなぁって呟いた次の日には、俺に染めろとドラッグストアで買ってきたカラーリングの箱を押し付けてきた。ピアスだってノリだけで両耳、計五つと鼻に一つ。
周りから一線置かれ始めているのは目に見えていたけど、やりたい事を躊躇いもなくやってしまう藍二のことが、俺は大好きだ。
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