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「俺さ、真昼にフラれたわ」
「は?」
「俺みたいな不良は嫌なんだって」
食べかけのたい焼きをジッと見つめる瞳に、さっき自慢げに免許証を見せつけてきていたような陽気さはない。悔しそうな藍二の横顔に、俺は返す言葉が思いつかなかった。
「まぁさ、真昼って真面目じゃん? クラス委員とか立候補しちゃうくらいだし、俺とは最初っから釣り合わんよなぁっては思ってた」
力無く、ははっと笑って、残りのたい焼きを口に詰め込んだ藍二の瞳は、真っ赤に充血しているように見える。
「……泣いたら?」
「は?! 泣かねーよ! 泣くかよバカ!」
ドスドスと、わざと足音を響かせて歩き出す藍二に、切なくなった。
「あいつが言い出したんだよ。もっと遠くまで行ってみたいって言った俺に、バイクの免許取ってみたら? って。だから一生懸命勉強したしバイトもしてようやく取ったんだよ。久々に学校に来てみれば、いきなり別れるとか言い出して。意味わかんねーし、なんなんだよ」
クッソと、小石を蹴り飛ばした藍二の背中が、小さく震えているような気がした。
「もう知らねーよ。あんなやつ……っ……死んだらぜってぇ化けて出てやる! じゃあな雅哉」
「……え、あ、おう、また明日な」
死んだらとか、不吉なこと言ってんじゃねぇ。
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