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このことを、藍二に伝えるべきかどうか。
悩みながら空に浮かぶ満月を眺めて、いつの間にか眠ってしまった。そんな俺の目の前に、突然足のない藍二が現れたんだ。
「なにやってんだよ!!」
『なんだよいきなり』
俺が完全に覚醒してベッドから起き上がって詰め寄ると、藍二は驚いたように目を見開く。胸の中がザワザワと騒ぎ出す。
「お前、なんで俺に化けて出てきてんだよ! 来るとこちげーだろっ!! っつーか、どこで事故った?! 今から俺が助けに行く!」
ハンガーにかけてあったウィンドブレーカーを乱暴に取ると、袖を通しながら部屋のドアを開けた。
「雅哉どこ行くの? こんな時間に」
「ちょっと友達探してくる」
「ええ?! なにかあったの?」
「わかんねぇ! とりあえず行ってくるから!」
母親に止められるのも振り切って、玄関から外へと飛び出した。
「おい! どっちに向かえば良い?」
ふわふわと宙に浮かぶ藍二を睨みつける。
『……奥山公道……』
めっちゃくちゃ山ん中じゃねーか! 遠いって! でも仕方ねぇ!
すぐに左へと足の向きを変えて、庭に置いていた自転車に跨った。
さっきから救急車のサイレンが遠くに聞こえていて、鳴り止まない。
本当に死んでんじゃねーぞ、藍二。
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