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学校帰り、ふらりと立ち寄った神社で変わった猫を見つけた。模様は黒白で大きさも一般的な猫と同じだけど一つだけ違いがあった。
尻尾が二本。化け猫だった。
日向で気持ちよさそうにくつろいでいる。傍には尻尾が一本の猫が三匹。何を気にするでもない顔で毛づくろいをしたり丸くなったりしていた。
見た目に変わったところがあっても、人間とは違って距離を取ったり喧嘩をしたりということがないらしい。ただ無関心なだけかもしれないけど、平穏に過ごしている様子を見ていると羨ましくなってきた。
この中に混ざりたい。
僕はいま簡単に言って学校生活にうんざりしている。いまは五月病の季節だけど、それとは関係がない。原因ははっきりしていて、分かっていて身動きが取れずにいる自分に疲れている。
現在中学二年生ではあるけどこの学校に通い出してまだ一カ月。医療系の学校へ進学者が通う私立中学から編入したのだけど全く馴染めない。小学生の頃から知っている同級生もいるけどそれが馴染む手助けになることはなかった。
一年と一カ月で人間関係がすでに固まっているせいか、打ち解けられなくて私立中学を辞めた意味も消えてしまいそうになっている。
私立を辞めたのは同級生たちの間にある「全員ライバル」という気の抜けない雰囲気に身が持たなくなったからで、その時もうんざりして疲れていた。
こんな状況がずっと続くならもう猫になりたい。じっと猫たちを見ていると化け猫と目が合った。
「あの、猫になりたいんだけど」
言ってもどうにもならないことを言ってみたら、猫は返事変わりのように目を光らせた。偶然そうなっただけなんだろうけど、化け猫であることもあって 何かがあるような気がした。
怖くはない。それどころか逆に何か起これば良いのにと思うぐらいで、何も起こらなくても数日間ぐらいは現実逃避したいと思いながら帰宅した。
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