マカロンは犬を構う

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 (あっし)の名前は渡辺真華倫(わたなべまかろん)。ショッキングピンクのツインテールと真っ黒い口紅が特徴の女子高生。一言いうと、ギャルである。  そして、横にいるのが幼馴染でお嬢様高校に通っている安田明(やすだめい)だ。ちょっと世間知らずで、あんぽんたんな子だ。  今日は、メイが『リュックが欲しい』と言う事なので、一緒に買いに行こうとちょうど家を出た所だ。  そんな事を考えていると、横にいるメイが私を睨み付けている。 「どうしたんだメイ。そんなに怖い顔して」  私が話し掛けると、メイは私のおでこをツンっと突っついた。 「マカロン、今頭の中で、私の事ディスらなかった?」  流石は幼馴染。私の顔付だけで、何を考えているのかお見通しとは、御見それ言った。  (あっし)とメイの家は五〇メートル程しか離れていないので、幼稚園の時からの付き合いになる。もうかれこれ一〇年は友達をやっているので、私の些細な顔つきだけで、何を考えているかが分かるらしい。  とは言え、私もメイの事を『あんぽんたん』と思っている事がバレてはいけないので、適当に誤魔化す事にした。 「やだな~メイ。私がメイの事、世間知らずのあんぽんたんと、考えているとお思いで?」 ……しまった。墓穴を掘った。 「なるほど。……マカロンは私の事をバカだと思っているんだね」 「バカとは思ってないよ。『あんぽんたん』とは思っているけど」 「……やっぱり。そう思ってたんだ」 ……あっ、しまった。引っかかってしまった。 「……そんな事より、ほらメイ、ここの竜さんの家のぺスかわいいねぇ~~」  ぺスと言うのは、近所に住んでいる竜さんの飼い犬での名前だ。子供の頃はメイと一緒にたまに散歩をした事もあるので、私達(あっしら)とぺスは良く知った仲だった。 「お~ぺス、元気か? 私の事覚えているか~? もうおじいさんになっちゃったか?」 「マカロン、何話誤魔化しているのよ」  私の誤魔化し作戦はメイにはバレバレだった。とは言え、ここで『メイのあんぽんたん』に話を戻すわけには行かない。何が何でもぺスに話を逸らすのだ! 頑張れ私! 「よ~し、ペスいい子だ。ペスお手!」  すると、ペスは私の手の上に前足をポンと可愛らしく乗せた。 「ペス、マカロンのいう事聞くのね」 「そりゃぁまぁ、子供の頃からの知り合いだからね。よ~し、ペスおかわり」  しかし、ペスは手を置いたまま動かない。 「ペス、おかわり!」 「マカロン、ペスっておかわり知らないんじゃないの?」 「そうか。お前、知らないのか。それじゃぁ、ここのお姉ちゃんが教えてくれるから、よく見て覚えろよ」  メイは一瞬ハテナと言った顔をしたが、流石はメイ、私の思っている通りに動いてくれた。 「メイ、お手!」 「ワン!」  そう言いながら、メイは私が差し出した手の上に右手を置いた。 「よ~し、いい子だメイ。じゃぁおかわり!」 「ワン!」  今度は手を入れ替えて、左手を私の手の上に乗せた。 「ペス、これがおかわりだ。よく覚えておけよ。じゃぁ、メイ、つぎはチンチン!」 「……そんなものありません!」  メイは顔を赤らめて、上目遣いで私を睨んだ。中々にカワイイ。 「なんだ、残念だ。メイのチンチン見たかったのにな~。あはは」  メイも、私の笑いにつられて微笑んだ。 「よし、じゃぁメイ、次が最後だ。メイ『おまわり!』」 「ワン!」  そう言ってメイはキリっとした敬礼を行った。 「……メイ、……それは『お回り』じゃなくて、『お巡り』だ……」  
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