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おじさんはおろおろした＊
その夜、私は最大の困難に直面していた。
「ひっ……た……痛っ……」
せっかく風呂から上がったおじさんが部屋に帰って来たのに、私はとても誘惑だのと考える余裕がない状態だった。
「はぁ。エマ、今度はなんの騒ぎだ？ 俺の部屋には入るなとあれだけ言――お、おまえ、どうした？」
私の尋常じゃない様子に、おじさんが顔色を変える。
私はパリッと糊のきいたシーツの下で、脂汗を流して、死にそうな思いをしていた。
「いっ……痛くて……全然、動けない」
「だから、いったい何をどうしたというんだ？」
私からシーツをとりあげようとするおじさんに対抗したくても、体を動かせなくて、情けなくまた悲鳴を上げる。
「いっ、たたた……おじさん、どうしよう。助けて……動けない……」
「だから、どこが痛いんだ？ それじゃわからな……なっ――」
おじさんがシーツの端をめくって絶句したのは仕方のない事だ。
マリーが送って寄越したものは張形……性玩具だった。
男性器を模した、しかし女性が使うことを意識して少し可愛らしい彫刻の入った、持ち手のついた白い細長い物体だ。花模様が彫りこんであって腹立たしい。
シーツを持ち上げたおじさんからはその張形の先が私の秘めた所に入り込んでいるのが見えたはずだ。
何がどうなったのか、先の出っ張った部分が入り込んだまま動かせなくなった。怖くて震えがきて引き抜くこともできない。
「何をしている、早く抜かないか」
慌てたおじさんが部屋を行ったり来たりする。
「抜けないの！ 全然、動かせないのっ！」
「入れたんだから出せるだろうが」
「中がくっついてしまって、どうにもならないのよ！」
説明するのも情けなくて、涙が出そうだ。
「はぁ？ 馴らしもせずにつっこんだのか？」
「だって、どうしたらいいかわからなかったの！」
おじさんが張形を片目で確認する。どうせ見えているのだから普通にみて、早くどうにかして欲しい。
「いったい何の材質なんだ。鼈甲か？ いや、牛角か何かか？ おまえ、それって水でふやかしたり油を塗ったりするんじゃないのか？」
「わからないわよ！ 挿れかたは書いてなかったの。ああ、どうしよう！ ほんとに無理ぃ！ 痛いのよ！ いたいよぉ……」
マリーは挿入した後の行動をこちらが赤面するほど丁寧に手紙に記したが、道具の準備の仕方などは何も書いて寄越さなかった。
「……わかった、少し待て。落ち着け、大丈夫だから。いや、落ち着くのは俺か？」
おじさんは自分にいいきかせるようにして、ベッドの上にあがって、私を後ろから抱き留めた。
こんな心細い時に、おじさんの温もりが有り難くて体をすり寄せる。
「まったく、おまえは厄介な……」
おじさんは私の陰部に背中側から躊躇いながら手を伸ばして、綿毛に触れるみたいにごく軽くそこを撫でる。
「なんだってこんな物を挿れてしまったんだ。貞淑にしろとは言わないが、こんなもので自分で処女を失うなんてどうかしている……」
しばらくふわふわと張形の周りで彷徨っていた指の動きが、快感を引き出すための意志を持った動きに変わった。
おじさんは女性の体を知らないわけではないようだ。
覚悟を決めたのか、的確に私が感じるところを刺激しはじめる。
「濡れてもいないところに挿入したのがまずかったな。痛かっただろうに、途中で断念しなかったのは感心できない」
「だって、全然入らなくて、埒が明かなかったから、一気に入れちゃえばどうにかなると思って……」
「馬鹿。よく濡らしてからでなければ、指一本だって挿れたら痛いに決まってる」
おじさんの指が張形を飲み込んでいる所の上についている突起をふにふにと捏ねる。
「そんなの知らないってば――ひっ……っ！！」
鋭い快感が走り、中に入り込んだ硬い物体を締め付けてしまい、それと同時に引き攣れた痛みを感じる。
「ああ、すまん。まだぬめりが足りないか……」
おじさんは私から身を離して、私を横たえた。
覆いかぶさって私の足を掴んで蛙のように開かれると、自分の秘部がぎちぎちと乳白色の張形を咥えこんでいるのが見えた。
(ああ、これはヒドい……)
思った以上にの痴態に、消えて無くなりたいとすら思う。
おじさんは私の足を掴んだまま張形に顔を近づけていく。
「――？！」
べろり。
張形と肉との境目を生温かい感触が行ったり来たりする。
（……舐められてる？）
衝撃だった。身じろぎしてもおじさんは私の足を離さない。
中途半端にのびた髭が張形の周りの柔らかな肉にあたり、むずがゆい。
「あっ、あの……」
唾液をまぶしてぬめぬめと舌で舐められ、秘唇を吸われる。
視覚的な衝撃が強すぎて、心臓が爆発しそうに鳴った。
おじさんはさらに張形を咥えて、ぱつぱつになっている膣の入り口の少し上、さっき触れられて悶絶した突起に舌をのばす。
私は、さっきのような引き攣れた痛みが来ることを予測して身を固くした。
にゅるり。
舌を尖らせて陰核に絡めて、ほじり出すように舌を往復させる。
もう、何が何だかわからない。鋭い快感が背筋まで駆け上がる。
「あ、ああっ……中が……」
さっきと同じように膣が締まった気がして身構えたが、今度は痛みはやってこなかった。
おじさんは犬のように私の尖り始めた芽を舐め続ける。
「ひっ、あっ……ど、どうしよう……」
所在ない手で自分の顔を覆う。
色々なことが頭をめぐり、ぐるぐるとめまいがする。
唾液をまとわせて舌でコリコリと芯が入っている所を責められると、水音は大きくなる。
「おじさん……あっ、それ、き、気持ちよすぎて……」
思わず感想をもらしたら、何が良くなかったのか、きゅっと尖を吸い上げられる。
「ああああっ……そこ、やっ……」
どこが弱いの伝えてしまったようで、そこばかりねちっこく責めたてられる。
おじさんは無言でそれを続けるが、私の方は危機的な何かが迫ってきていた。
何か恐ろしいものががはじけ飛びそうなのだ。
やめさせなければと思うのに、おじさんに与えられる快感に頭がおかしくなってくる。
「なんか……たぶんこれ……マリーが言ってた、気をやるとか、イクとかって……この先まで……やったらそうなっちゃ……だと、おもうん、だけど……もう、む……」
もう無理と言おうと思った所で激しく舌と唇で芽を扱かれ、突起に軽く歯を当てられた。
「ひっ、おじさん、もう、やめて、ダメ、もう、む……ああああっ！
やぁっ！！ やっ、あっ！ あっああっ……」
終わりは急にやって来た。
ずくずくと快感の波に合わせて嬌声をあげ、背中を反らせて私は果てた。
気持ちの準備できないうちに絶頂まで引き上げられて、がくがくと体をひきつらせて生まれて初めて味わう真っ白な世界を味わう。
「抜くぞ」
おじさんは、私の膣に刺さったままになっている張形に手をかけて少し揺らす。まだきついがさっきほどの引き攣れはない。ぬちゃぬちゃと音が立って自分が濡れているのがわかる。
ギラギラとした絶頂の余波が引いてくると、急に自分を俯瞰で見れるようになる。
こんな格好で、こんなものを膣に咥えて、こんなふうにおじさんに舐めさせて……こんな予定ではなかった。
「おじさん……もう、結婚相手はさがさないで」
情けなくて涙がこぼれた。こんな悪いことをして、処女であるとはもう言えない。
私がどこかに嫁に行ったところでおじさんの顔を潰すだけだ。
「まったくだ。こんな馬鹿なことまでするなんて。内壁の水分を吸って癒着したのだろう。このまま引き抜くのは怪我をさせそうで怖い。もう少し濡らすから悪く思うなよ」
おじさんはべそべそと泣き出した私の涙をぬぐうと、上を向かせて唇を重ねる。
ふにゃりとした唇の感触を楽しむ間も無く、さっきまで私に快感を与えてきた舌が口の中に潜り込んでくる。
これがどんな快楽を生むか知ってしまった私は、単なる舌の動きとは思えずに、熱い舌をうっとりと受け入れる。
思ったよりも激しく私の舌を絡めとり、擦り合わせる動きに合わせて舌を動かしてみると、頭の中に私とおじさんが舌を絡め合う音が響く。
くちゅり、くちゅりと快感の波と一緒に濡れた音が耳を犯す。
何かを考えなくてはいけないはずなのに、凶暴な舌の蹂躙が私の思考を奪う。
（――気持ちがいい。ずっとこうしていたい）
酸欠と陶酔感で頭が馬鹿になった頃、一度私の口を離れた唇は喉を這いおりて、乳房の所で止まった。
私の体は明らかに期待で震えている。
触って欲しくて、誘うように薄い夜着の前をはだける。
おじさんは鼻息でため息をつくと、私に馬乗りになって胸を捏ね始めた。
「育ったものだな……」
胸の肉を寄せたり指を沈めたりしながら、すっかり立ち上がった乳首を唇で食む。
「うわぁぁぁっ！」
艶めかしい嬌声とは違う、ただの悲鳴が口から洩れる。
絶頂を覚えた私の体は、胸の刺激を膣内に伝えてしまう。
中を締め付けて締め付けて、ついに張形を押し出すようにぐぽりと吐き出した。
「ん、あぁっ、た……でた……」
肩で荒く息をしながら、産んでしまった張形を恐る恐る確認する。どこか切れたのだろう、うっすら血がついている。
おじさんは、忌々しげに私の体液で糸を引く張形を遠くに放り投げると、代わりに私の中に指を差し入れた。
「こんなもので快感を得ようと思うなよ」
「ちがうの、そんな、快感だとか、んっ……ぐっう……んっ――んっ……んっ！ ううんっ……」
再びキスで唇を塞がれて、下の口も指でふさがれて快感がどこにも逃がせない。
おじさんの指は何かを探るように私の膣内を堀り広げていく。
慎重に、より深く、よりいやらしく、おじさんの指が私の奥深くまで入ってくる。
（気持ちがいい……）
それ以上に心の空虚な所を満たされたようになって、もっと欲しいと、甘えるように舌を絡める。
指が私の反応を確かめるようにしながら体内を犯し進み、官能を掻き出す。
おじさんの手は顔程には優しげではない。拳は潰れ、指は長く、節は太く、木工の道具で皮膚が少し硬くなっている所もある。あれが私の中に深く入りこんでいるのだと思うと、ぞくぞくとした悦びで体が震える。
私はあっという間に指を膣で食みながら二度目の絶頂をを迎えた。
快感の余韻で力が入らずにおじさんの胸に倒れ込む。
「やってしまったな……家族ごっこはお終いか……」
おじさんの口から絶望的な台詞が吐き出されるのを聴きながら、私の意識は遠のいていった。
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