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「わうっ!!」
いつも通りかかると、嬉しそうにくるんと巻いたもふもふの尻尾を左右に振りながら寄ってくるんだ。
印象的なまろまゆに、キラキラとした大きな目。
健康的で、もふりとしてそうな艶のある茶色い毛並み。
首に装着されている赤い首輪がよく似合っている。
「おー、まろまゆ、今日も元気だな。」
フェンス越しに手を伸ばすと、遠慮することなく手のひらを舐められ、撫でろと言わんばかりに頭を寄せてくるんだ。
この人懐っこさ、番犬として大丈夫なのか?
そんなことを考えたりもしたが、牙を向いて吠えられるよりはいいかな。
自分の飼い犬というわけでもないのに、こうも懐かれると情も湧くというもの。
いつしか巡回の時に、このまろまゆの柴犬に会うことが、一つの日課になっていた。
巡回のたびに声をかけて、頭を撫でて。
「……なぁ、まろまゆ、お前、名前何ていうんだ?」
これが、僕がずっと気になっていることだ。
なかなか飼い主と会う機会がないため、僕はこいつの名前を知らないまま可愛がっている。
名前の代わりに『まろまゆ』って呼んでいるんだが……
ちゃんとした名前じゃないにもかかわらず、こいつ、嬉しそうなんだよなぁ…。
「人の言葉なんてわからないだろうけど、それでも『まろまゆ』って呼ばれて、喜んでちゃダメだろ?」
そうまろまゆに話しかけるが、「くるるる……」と喉を鳴らして、ご機嫌に尻尾をふりふり。
……もしかして、ちゃんとした名前、まろまゆって言葉に似てるのか?
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