名前は?

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まろまゆに似た言葉…… まんじゅう? あんまん? マカロニ? ……全然似てない。 僕のボキャブラリーが乏しいせいか、まろまゆに似た言葉なんて、全く出てこない。 「ホント、お前、何ていうんだ?」 そう問いかけても、嬉しそうにキラキラした目をして、尻尾を振ってる。 まろまゆの名前が気になるが……… そのうち知るチャンスもあるだろう。 「……じゃあな。まろまゆ。」 わしわしっと頭を撫でて、僕は巡回に戻って。 それから数ヶ月が経った九月のある日。 ある日突然そのチャンスがやって来た。 「イチロー!」 突然呼ばれた。 まろまゆのお宅の前で、唐突に名前を呼ばれた。 スチールフェンスの向こう側から聞こえた。 若い女の人の声。 しかも、少々強い口調で。 ……怒っているのか? 僕、何か怒らせるようなことしたのか? 頭を巡らせるが、誰かを怒らせるようなことをした覚えは全く無い。 「わふっ!」 女の人とは真逆な、楽しそうで弾んだまろまゆの鳴き声。 ……なんなんだ? 不思議に思いながらも、僕はそっとフェンスの向こう側へ声をかけた。 「あの、呼びましたか?」 フェンスの向こう側には、まろまゆと小さなスコップを持った小柄な女の人がしゃがんでいる。 飼い主さんかな? 「へっ?」 こちらを向いたその女の人は、なぜか前髪がものすごく長かった。 長い前髪で顔がほぼ隠れていて、見えるのは、口元と頬の半分くらい。 ……何か理由があって伸ばしているのだろうか?
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