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僕の手にすり寄ってきていたまろまゆが、突然ふいっと僕の手から離れていった。
………?
どうしたんだ?
離れていったまろまゆを見ていると……
しゃがんだままの女の人の側へ。
気遣うかのように、女の人の側へすり寄った。
「……イチロー、どうしたの?」
そう口にし、まろまゆを優しく撫ではじめた女の人。
………イチローって………
もしかして……
まろまゆの名前……か?
僕を呼んだわけじゃなく、まろまゆを呼んだだけか?
それを僕が勝手に勘違いした?
「はははっ!」
こんな偶然、アリなのか?
自然と笑いが込み上げてくる。
表情はやはり分からないが、僕が笑いはじめたことに、女の人はどうしたのかと戸惑っているような様子。
「まろまゆじゃなくて、イチローだったんですね。」
僕の言葉に、女の人はこくりと頷いた。
「ははっ!僕の名前も一郎なんです。宮崎一郎。」
「えっ…?」
驚いたような声を上げた女の人。
多分、驚いて僕の顔を見たような動きが見てとれた。
「数字の『一』に、桃太郎とか金太郎とかの『郎』で一郎。」
「一…郎…さん…。」
説明してから思ったけど、僕の名前の漢字の説明、いらないなー、なんて。
「イチロー、僕とおそろいだな。……だから、さっき呼ばれたと思ったのかー。呼ばれたのは、犬のイチローだったってオチかぁー。はははっ!」
だって、普通思わないだろ?
犬と同じ名前だなんて。
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