48人が本棚に入れています
本棚に追加
こんな偶然、あるものなんだなぁ。
ただでさえ可愛かったのに、同じ名前だと思うと、まろまゆの柴犬イチローが、ますます可愛く見えてくる。
もっとイチローと戯れたいところだか……
そろそろ仕事に戻らないと。
「では、僕、巡回の途中なので、これで失礼します。」
帽子をサッと脱いて、女の人に向かって一礼。
「…あ、…はい……。」と返してくれる女の人。
ふと、ここまでやり取りをしていたのに、女の人の名前さえ聞いていないことに気がついた。
「……飼い主さん、よければお名前を聞いてもいいかな?」
もしかしたら、これからイチロー繋がりで話したり、顔を合わすかもしれないし。
知らないより知っている方がいいだろう。
イチローの時のように、何ヶ月も名前が分からないままというのも嫌だし。
恐る恐る、ゆっくりと女の人は口を開いた。
「…は……原田…くるみ……。」
くるみさん。
……いや、なんとなく年下っぽいし。
くるみちゃん……だな。
「くるみちゃん。可愛い名前だね。では!」
僕はニコリと微笑んで。
巡回で使っている自転車に乗ってイチローとくるみちゃんのお宅を後にした。
まさか、イチローがきっかけで出会ったくるみちゃんが、僕の大切な人になるなんて、この時の僕は考えもしなかったのだった。
END
最初のコメントを投稿しよう!