episode 01 灰色娘と三人の騎士

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 ファミレス『Castle』の店長・主税に少なからず対抗心を燃やしている桜士が可愛く思え、憂姫は笑みを漏らす。 ━━子供の頃、近所のクソガキたちから「タカアシガニ」と呼ばれてイジメられていたのを守ってやったのは、こっちだったのに。 「守られる側になっちゃったかぁ」 『自販機の前で会ったミッチーが』 ━━桜士のファンみたいだよ。  続いて返信しかけたメッセージを全文書く前に、憂姫は削除ボタンを連打して消去した。  あの瞳の潤ませ方は、単に『推し』を愛でているというよりも……ガチ恋的な崇拝っぷりだった。 「しばらく、様子見しよ」  スプリングマットのないパイプベッドに敷かれた和布団にダイブするわけにはいかず、憂姫は静々と布団に潜りこむ。それでも疲れた体には充分な心地良さで、まぶたを閉じた数秒後には意識が彼方へ飛んでいた。
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