episode 01 灰色娘と三人の騎士

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* 「はぁ……疲れた」  アルバイト終わりの休憩室で、憂姫は珍しくテーブルに突っ伏して動けずにいた。追いかけるようにやってきた店長の狭間(はざま)主税(ちから)が、心配そうに覗きこむ。 「今日は客が途切れなくて、ホールもフル回転だったね。黒川さん、大丈夫?」 「いや、バイトの忙しさはいいんですよ。心地良い疲れなんで。ただ、学校が……」 「あぁ……叔父さんちに引っ越して、今日は新しい学校生活の初日だったんだっけ。お疲れの中、本当にありがとうね」  そもそも以前に籍を置いていた進学校も、母が喜ぶ顔が見たいがために通っていただけだった。大学進学に未練も興味もなかったし、働きながら一人暮らしをするつもりだったのだ。けれど━━。 「高校だけは卒業しろって、叔父が独断で近場の高校で編入手続きを済ませちゃって。ていうか、逆に(ここ)までが遠くなっちゃって……交通費が倍額かかるようになってもバイト続けさせてもらって、ありがとうございます!」  アルバイト先も変えなければと頭を抱えていたところ、店長である主税(ちから)が「交通費はいくらでも出すから、辞めないで!」と懇願してきたのだ。 「僕が自腹で交通費を払ってでも辞めてほしくない人材だからね、黒川さんは。ほんと、何でも頼って。学校辞めて働きたくなったなら、いつでも正社員としてウェルカムだからね!」 「ありがとうございます……」  そこまで入れ込まれると実際のところ怖くもあるのだが、今は主税の厚意を憂姫は素直に受け入れることにした。 * 「単なる女子高生好きなオヤジなんじゃねえの、その店長」  バイトを終えて、叔父の家に帰宅後。自室で課題に取り組んでいる憂姫の元へやって来るなり、桜士が毒を吐いた。
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