第一話 転校生

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二年生の教室は三階にある。 私達は一階だから、階段を登って教室に向かった。 教室に向かうともう人集りができていた。 「わぁ、皆んな見に来てるみたいだね!  凄い人じゃん!」 「そうですわね…。  これじゃ、見れそうにないですわね?」 わいわい騒いでいると二年三組の教室から 男性が何人か出てきた。 「あっ、ねぇ!南!  あの人じゃない?  初めて見る人だもん!  それも、周りから声かけられてる!」 「えっ?嘘…。どうしてあの方が…。」 「えっ?何?南の知ってる人? 南?どうしたの?」 私は驚いて、思わず走り出していた。 そこに居たのはなんと、昨日出会ったあの人だったのだ。 私は人混みをかき分けてその人に声をかけた。 「あの…待って下さい。 あなた、昨日の方ですわよね?」 彼は振り向いてこちらを見た。 すると、かなりびっくりした様子で 急に叫び出した。 「うっ、わぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!  でっ、でたぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!  バケモノ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 その声に周りの人達も騒ぎ出した。 「えっ?何?どうした?」 「竜くん?どうした?」 「何々?なんの騒ぎ?」 当の本人は怯えている様子だった。 「困りましたわね…。 一先ず、こちらに来て下さる?」 私は慌てて、彼の手を引っ張って連れ出した。 周りは騒いでいたが、突然の事で呆気に取られた様子だった。 私は彼の手を引っ張ってとにかく走った。 そして、人気のない所に彼を連れて行った。 「わぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!  殺さないで下さい!」 「私は人間を殺したりはしませんわ!  安心して下さい。  そんなに怯えないでもらえます?  皆さんには内緒にしてるので… どうか…誰にも言わないで頂きたいの。」 彼は昨日からずっと怯えているようだった。 仕方のない事だけど、私は少し悲しくなった。 人間は私の存在に混乱している。 当たり前の事だけど、傷ついた。 気づいたら私は涙を流していた。 「………えっ? 妖怪も泣くの…?」 「あっ…。ごめんなさい…。 泣くつもりはなかったんです…。 ただ…あなたを傷つけたいわけでは  ないの…。  怖がられるのは当たり前ですわ…。  妖怪なんて…あなた達人間からして  みれば、怖い存在ですものね…。  怖い思いをさせてしまってごめんなさい。  もう…話しかけないようにしますわ…。  でも…一つだけ約束して下さる?  誰にも私の正体を喋らないと約束して欲しい  のです。  そうすれば、もう二度と怖い思いはさせませ  んわ…。  お願いできますか?」 「…分かった。  約束する。」 「ありがとうございます。」 私は笑顔で微笑んだ。 そして、その場を立ち去った。    
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