第一話 転校生

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彼は言われるがまま、黙って車に乗った。 いや、"乗せた"が正解だろう。 私は父に事情を話した。 「お父さん…。ごめんなさい。  私ったらドジってしまいました。  これは…私の責任です。  彼とは初対面ですが… 仕方がありません…。  結婚を前提にお付き合いしたいと  思っております。」 父はがっかりした顔をしていた。 「そうか…そうだな…。知られてしまった以上  彼には諦めてもらうしか、方法はないな、  仕方のない事だ。  私もそうだったように…。」 私と父は話しに夢中で、彼の存在を気にしていなかった。 「…あの…。お取込み中すみませんが… これは一体…どういう状況なんですか?  俺はこれから何をされるんでしょうか?」 父は笑って答えた。 「あぁ、すまないね。  君は、娘の秘密を知ってしまった。  だから、タダで返す訳にはいかないよ。  君にはこれから、契約を交わしてもらうよ。  覚悟してくれ。」 「はっ?それは…どういう意味ですか?  俺…秘密なんて知りません。 だから、帰して下さい。  お願いします。」 「君は見てしまったんだろう?  驚くのは無理もない。  君は人間なんだからな。  私も、人間だから君の気持ちは痛いほど  わかるんだ。  初めてあれを見た時は死ぬほど驚いたさ。  だから、怖いとは思うよ。  でも、安心していい、  君はとてもラッキーだ。  なんて言ったってうちの娘はとても可愛い  からな。  その辺の人間よりも、とても賢いし、  可愛い子だ。  そんな娘が、君の嫁になると言ってるんだ。  ありがたいと思いなさい。  さぁ、契約を交わそうではないか!」      
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