第一話 転校生

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私は、しばらく気絶している彼の側にいた。 すると父が部屋に入って来た。 「彼の様子はどうだ?  まだ起きないのか?」 「ええ、まだですわ…。   困りましたね…。  彼には話したい事が沢山あるのですが…」 「それにしても…お前が結婚か…。  突然すぎるなぁ…。 お父さんは寂しいよ…。」 父は寂しそうな顔をしている。 私は笑って父をなだめた。 「お父さん。大丈夫ですよ。  私はずっとお父さんの側にいますわ。  そうですわ!  彼にもここに住んでもらえばいいのよ!  ね?そうしましょう?」 「ああ、そうだな!  そうしてもらおう!  だが…彼は賛成してくれるだろうか?」 「私が説得してみせますわ。」 「うっ…。」 父と話していると、彼が目を覚ました。 「あら?目覚めたみたいですわね!  ご気分はいかがですか?」 「うっ…うわぁ! こっち来るな!」 彼は私の顔を見て怯えているようだった。 無理もないだろう…。 私の正体を知ってしまったのだから…。 「困りましたわね…。 お話が出来る状態ではなさそうね…。」 困っていると父が私に言った。 「私が彼と話してみるよ。  お前は一旦席を外しなさい。」 「わかりましたわ…。 お父さん…お願いします。」 私は仕方なく部屋を出た。 私は雪女だ。 彼が怯えるのは当たり前だった。 人間は私達妖怪の存在を簡単には受け入れてくれないだろう…。 私は少しだけ、落ち込んでいた。  
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