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「ぽんちゃん、今日もお仕事行ってくるね。元気でお留守番してるんよ。」
いつもの朝、飼い主からそう言われて撫でられる俺。頑張ってくるのニャ。そう見送りまた窓ウォッチングでもしよっと。今日も旨そうな鳥は来ないかニャ。
ササッ
そのとき壁際でなにかが動いた。俺のニャンター魂が燃えるぜ!この前もゴキちゃんを仕留めて飼い主に誉められたところなのだ。
ダダダッ
追いかける俺。追いつめた!いったい正体はなんニャ!?
「追いつめられました~。猫さん、ここはひとつ勘弁してもらえませんか?」
そう言って頼んできたのはヤモリだった。
「昨夜の嵐になんとかこの家にあがって安心していたのです。いや~昨夜の嵐の雷といったら!今でもブルブル震えます、私。」
「確かに昨夜の嵐はひどかったのニャ。俺も野良猫じゃなくて本当に良かったと思ったもの。」
「そうでしょうとも。では見逃して頂けますか?」
「わかったニャ。でも飼い主がいるときには見つからない方がいいよ。ああ見えてうちの飼い主は爬虫類系が大嫌いだから。最悪捕まえられてゴミ箱に捨てられるよ。」
それはつまり死を意味する。
「わかりました。ご忠告ありがとうございます。では。」
ササッ
そう言うとヤモリは天井の方に向かって壁を登っていった。
ヤモリを見逃した俺はすやすやと眠りにつきながら飼い主との日々を思い起こす。
一昨日、飼い主はデデニーの音楽祭に行って帰りがとても遅かった。罰としてチュールを2本要求してやったのニャ。しかしあれのマグロ味はとても美味しいな。あれ?でも自然界で猫ってマグロ食べるのかな?
飼い主はたまにウクレレを聴かせてくれる。ポロン♪︎ポロン♪︎ポロロン♪︎♪︎
いい音色ニャ。でもウクレレでボカロの曲を弾くのはどうかと思うニャ。まぁ飼い主が楽しいんだったらそれでいっか。
ドンッ。あれ?歩いているとなにかを倒してしまった。ああ、飼い主がこの前買ってきたプロテインだニャ。これでダイエットするとか言って3日坊主で全然痩せない飼い主。でも俺はぽっちゃりした飼い主のことが大好きだニャ!
俺の飼い主はとても優しいニャ。あ、でもこの前飼い主が買ってきた高級デニムを引っ掻いて穴を空けたときはけっこう怒っていたニャ。でも猫はそういうもんニャ。フリーダムなのニャ!
飼い主が盤を並べて趣味の詰将棋をしているときに俺は駒をバラバラにして遊ぶのが好きニャ。そのたびに飼い主は駒って笑うのニャ(←うまいかニャ?)
ガチャン
そうこう思い出に耽っていたら夜になり飼い主が帰ってきた。
「ぽんちゃん、今日もお留守番賢かったね。」
そういって撫でられる俺。そのとき
ササッ
あのバカ。あれだけ見つかるなって言ったのに。
「あ、ヤモリがいるね。」
そう言って飼い主はビニールでヤモリをいとも簡単に捕獲した。
「ひぇー!」
ヤモリの奴終わったな。そう思っていたら飼い主はまた外に出ていった。どうやらヤモリを外に離しに行ったようだ。
やっぱり俺の飼い主は優しい世界一の飼い主ニャ!
戻ってきた飼い主に俺はまた撫でられに行った。
〈完〉
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