それはクリスマス・イブの事。

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中に入ると、男、もとい入江九一と吉田稔麿はキョロキョロ見渡していたが、 「これ、着替えたい。」 稔麿が血まみれの袴をつまんでいった。 血はもう固まっていて滴りはしないが、衛生上悪いということで神夜が俺の服を取りに行った。 「ねえ、お前ら、九一と稔麿だよな。」 「うん。」 「ああ、先程話した。」 なんかもう、あれなんだけど。 誠華のことがあったからこんなこともあるかもなあなんて思っていたため、やっぱり、といった感じしかしない。 しかし、死体としてあったはずの二人が目の前でキョロキョロしているのは、違和感しかない。奇妙で、不思議な話だ。 3人共あまり喋ることがない。 「これでいい?」 神夜が持ってきたのは、Tシャツに長ズボン。 「凄え普通だな。」 俺がつぶやくと、神夜はプウっと頬を膨らませつついった。 「持ってきただけ感謝しない?」 神夜がさっと、別室へ入ってしまうと、二人の着替えを手伝いながら俺はいった。 「こっちにはさ、秋湖がいるんだけどよ、」 「え?玄瑞が?」 九一は大きめな目を更に大きくさせていった。 確かに九一と秋湖は仲が良かった。 「あー、高杉?あの女子は?」 稔麿は興味深げに言った。 「襲うなよ、俺の恋仲ではないがな。春風咏ってんだ。秋湖は神夜って読んでいる。」 「まあ、咏って嫌だよね。」 稔麿は笑った。 「それにしてもこの、ようふく?はきついな。」 「なれると思うぞ。それに九一も稔麿も適応力高いだろ。」 「勝手に決めつけないでよ。」 うれしかった。死んだこいつらと話せるなんて。 口では死んでも言わないが。
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