それはクリスマス・イブの事。

1/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

それはクリスマス・イブの事。

クリスマス。 その言葉は私にとって、大きな、そして悲しい意味を持つ。 それは、それは、 「クリぼっちは嫌だ!!」 「うるせえ。」 あれ?この人何言っているのだろ?と思われた方もいらっしゃることだろう。 なぜ一人ぼっちのはずの人の発言に返事が帰ってきたのか。 「大体な、人の家に押しかけてクリスマスを過ごそうってのが悪いんだ。」 そう。 クリスマス気分の浮かれた世のムードに耐えられず、同じくクリぼっちであろう万年モテ期の彼女なしという腹立つ腐れ縁でもいいから頼ってみようとそいつの家に押しかけてみた。 この万年モテ期のくせして彼女なしの腹立つ野郎は、中学の頃からの腐れ縁だ。 スラリとした足、長い腕、小さな顔、そしてその顔すら知性的で整っている。 別に容姿に貶すポイントがないだけで惚れているわけではない。 「別にいいでしょ、あんたもクリぼっちのくせに。」 「俺は望んで彼女がいないんだ。お前は望まずして彼氏がいない。そこに違いがあるな。」 いちいち腹立つ野郎だな。 そう思って足を踏んづけてから勝手にベットに入らてせていただく。 「おい、お前何、人の布団に勝手に入ってやがる。」 「黙れバカ。」 「馬鹿じゃねえし。呼春(こよはる)って名前ちゃんとあるし。」 そう。 この腹立つ野郎の名は呼春という。 彼の婆さんがつけたらしい。こんなやつに穏やかな名前は似合わない。 窓をふと見た。ホワイトクリスマスでもない。ただ都会特有のネオン色の光がついていた。 「暗いし、今夜泊まっていい?」 「好きにしろ。」 偶に私達はお互いの家に泊まることがあった。だからといって男女のベットシーンなんて展開は一ミリもない。過去一度もそういう展開になったことがないから今も腐れ縁として続いているのだろうけど。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!