水那 2

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 ハッ――と。  次に目を開けると、そこはコンビニではなかった。  古びたアパートの一室。まだ温かい布団の上で、制服姿のままへたり込んでいる。 「……は……?」  何が――何が起きたのか。  陽の差し込む小さな部屋は、異国から来た友人の香りがした。 「……ッ!」  すぐさまアパートを飛び出した。  赤い朝焼けの中、息を切って走れば、ほどなくコンビニに到着する。  店舗に乗用車が突っ込み、大きく潰れたまま静止していた。  (おびただ)しい血痕。  駐車場にはパトカー、だが救急車はいない。既に走り去ったのだろうか。  店長が警察に事情聴取されている。 「……ほら来た、あれが水那です。」  水那は愕然と立ち(すく)んだ。  そんな彼女を指差しつつ、店長が渡したのは在留カードのコピーだ。  トゥイの顔写真を見て、警察は目を()き驚いた。 「瓜二つだ」 「赤の他人なのに、本当にそっくりで。制服だといよいよ混乱するから、ふたりのシフトはずらしてたほどです。さっき、トゥイから水那に交代する時、何かゴソゴソやってました。水那がサボりたくて、トゥイに自分のフリして働けって押し付けたんでしょう。それで死ぬなんて、酷い話ですよ……」  固い地面には、あのお守りが置き去りになっていた。  白かった布地は、流れた血によりすっかり染め上げられている。  のお守りだ。  トゥイに何かあった時は、全て自分が引き受けたい……そんな祈りを込めて作ったもの。  けれど。きっとそれは、水が水に溶け込むように。  を持つ彼女達にとり、想像を超えて馴染む霊具と化した。……  彼女が霊に襲われたその瞬間、お守りは身代わりの水那を呼び出した。  反対に、トゥイは水那のいたコンビニへ飛ばされた。でも、同じ時、水那にもまた暴走車が迫っていた。  結果として――彼女こそが、水那に化けた形で死んだのだ。
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