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トゥイ。
極めて清らかな心を持ちつつ、哀れな死に方をした彼女は、天上でも同情を集めたらしい。
それでなんと、名を口にするのも恐れ多いようなお偉方から、直々に魂の鍛錬を受けることとなったのだ。
しかも、トゥイがこちらに来ている間は、水那があちらへ召喚される。彼女の代わりにお偉方にしごかれるのだ。
が、所詮は生身。トゥイが受ける英才教育の比ではない。
「そのせいで、トゥイは人間離れして、どんどんあの方達に似てきたみたいだ。このアパートに来たのも、あの婆さんに声かけたのも……たぶん何の意図もない。もうあんまり覚えてないってことだろうな、自分の死に方さえ……」
憂き世で覚えた心は、天上の清らかな水で日々雪がれて。
いつかは、水那のことも忘却してしまうのだろうか……もう随分薄れつつあるのだろうか。
直接会って確かめることはできない。トゥイは死に、既に遠い存在となったのだから。
だが、虚しくはない。水霊という僧侶は、水那であると共にトゥイでもあるのだから……。
しゃん、しゃん――。
水霊は歩む。悲しみさえ清める錫杖の音を聞きながら。
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