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トゥイ 1
トゥイ、二十歳。留学生として来日し、もうすぐ専門学校に進学する。……
新しいバイト先のコンビニにて、店長らにそう自己紹介をした。
外国人は彼女だけだ。皆手探りのような、遠慮がちな態度だった。トゥイも積極的な性格ではないため、なかなか打ち解けることができない。
でも、ひとりだけ。気さくに話しかけてくれる同年代の女性がいた。
ほぼ勤務時間が重ならない相手だ。唯一、水曜日の真夜中、退勤前にすれ違うだけの人。
知り合って間もなく――。仕事を終え、着替えている時、突然「トゥイ。水ちゃん」と呼ばれた。
鏡の中の自分が話しかけてきた、それくらいの驚きを持ってトゥイは彼女を見た。
「あれ。違った? ググってみたんだけど」
もう勤務時間のはずなのに、真っ赤な髪の彼女はパイプ椅子に腰掛けて寛いでいた。服も、タイトな革ジャンにジーンズのままだ。
水曜日、シフトは彼女――水那に引き継がれる。深夜の忙しくない時間帯とはいえ、ふたりともここにいるのでは、店長のワンオペになってしまう。
でも……。
ニコッと格好良く笑う水那の、澄んだ大きな瞳を見ていると、もっと話してみたいという心が勝った。
「ミナさん。どして私の名前の意味、調べてくれましたか?」
「日本人なら漢字で意味わかるけど、外国人だと全然わかんないなって、当たり前だけど気づいてさ。トゥイは水って意味なんだね。私の名前も水。お揃いだ」
「……それに、毎週水曜日に会いますですね」
「あはっ、そうだね! ねぇ、仲良くしようよ」
「はい! よろしくお願いします。ふふっ」
――学業とバイトの両立は大変だ。
国の家族に金銭的余裕はない。生活費も学費も、全て自分で工面しなければならない。
苦しいばかりの毎日だったが……この時から、彼女は水曜日が待ち遠しくて仕方なかった。
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