お守り

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お守り

 座らされたトゥイは、少しずつ語り始めた。  二ヶ月前――。専門学校に進むと共に、とあるアパートに移り住んだのだ。  異変はすぐに現れた。 「寝ている時、怖いことがあります」 「どんな?」 「……怖い音、怖い声。たくさん聞こえます」  膝の上で手を握り込む。  一度、水那の表情を(うかが)った。  腕と足をハンサムに組んだ水那は、誠実そのものの瞳で見つめ返した。  トゥイはか(ぼそ)い声で続けた。 「よ、夜中……。私、ひとりで寝ています。その時、耳のすぐ近いから、女の人の声。聞こえます」 「何て言われる?」 「わかりません……。日本語、違います……? でも、私の国の言葉、も違います。わからないこと、ずっと言います……」  水那は思案げに顎を触った。トゥイは再び泣きそうな顔になる。 「ミナさん、変ですか? 私の話」 「いや? 全然変じゃない、むしろ、トゥイが嘘ついてないのがよくわかる。霊の声ってのは、聞いても意味の理解できないことが多いから」 「霊……」 「だけど――。トゥイはそのわけわかんない言葉を、毎晩聞き続けているわけだ。なら……そいつが何を言いたいのかくらいは、感じ取れてたりするんじゃない――?」 「あ……」  青ざめて首肯(しゅこう)する。恐る恐る口にした。
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