お守り

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「……お…………」 「……」 「……と思います。あの女の人の気持ち……。わ、私の体、こう」  と、両手で水那の(ひじ)を掴む。  何度も大きく揺さぶってみせると、互いのパイプ椅子がキシキシと音を立てた。 「こう、こうやって、地震みたい――。そして、言います。起きて起きて……。あの人はたぶん、起きて、の気持ちです」 「トゥイはどうしてるの?」 「何も――できません。体、重くて動きませんから。何も見えません、言えません。体、死んだみたい……。耳だけ、起きて、起きて、たくさん聞こえます。すごく怖い、でも私、全然起きられません……」 「そしてそのまま朝になる?」 「はい……」 「やつれるわけだ。馬鹿なトゥイ、もっと早く相談してよ」  叱るようでいて、優しい温もりに満ちた言葉だった。トゥイは子供のようなしゃっくりを上げた。  よしよしと背中を(さす)りつつ、水那は呟く。 「事故物件ってやつかな」 「事故、ブッケン?」 「前に住んでた人が死んじゃった部屋のこと。次に貸す時は、そういうことがあったって言わなきゃいけない決まりなんだけど……もしかしたら、外国人だからって言わなかったのかもしれない……。管理会社に電話して確かめなきゃな。もし本当にそうだとしたら、担当した奴をぶん殴ってやる」 「ええっ?」 「まあ、これはまた別の話。今一番大切なのは、その幽霊をどうするかだ――」
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