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言いかけた時、水那のジャケットの内側でスマホが震えた。
トゥイが遠慮して体を離すと、億劫そうに取り出して応答した。
相手は、ひとりで表に出っ放しの店長らしい。
『何やってるの? 早く来て。俺仮眠取りたいんだ』……すぐ傍にいるトゥイにはよく聞こえた。
水那はチッと目を鋭くした。
「いや、店長よりトゥイのがよっぽど体調悪そうなんだわ。毎日会ってるなら気づけよ! それができないんなら、前から頼んでるように、私とトゥイのシフトを合わせてよ」
『それはちょっと。ややこしいじゃん』
「ったく……。とにかく、私今日休むから。早くなんとかしてあげなきゃ」
『はぁ!? 休む!?』
悲痛な叫び。電話越しでなくとも、店舗から直接聞こえかねないほどだ。
また、この意向にはトゥイも驚き、慌てて首を横に振った。
何度もぶんぶんと振るので、水那も気を取られて言葉を切る。その隙に、トゥイはスマホのマイクに素早く発した。
「店長さんごめんなさい! ミナさんは休みません、すぐ行きます」
「あ!? こら、トゥイ!」
終話ボタンも押してしまう。
水那は怒った表情を浮かべてみせたが、長くは続かなかった。
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