お守り

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「もう……。トゥイを送りがてら、部屋を見せてもらおうと思ったのに。錫杖だって、すぐ除霊が始められるように持ってきたんだ」 「ミナさん……ありがとう。でも、今はここをお願いします。店長さん、たくさん働いて大変ですから」 「私のシフト、朝九時までだよ? 終わるまで時間潰すのもつらいでしょ」 「いいえ……ひとりで帰ります。うちで少し寝ます。明日も授業、ありますから」  水那の大きな瞳が曇る。 「帰る? ひとりで? ……やめな。トゥイの弱り方、普通じゃないよ」 「大丈夫。今までひとりで寝ましたよ」 「違う、今まではご先祖様達が守ってくれてたんだよ。……そのご加護が薄れてる。部屋の幽霊に負けたんだ。だからそんなに体調悪くなってるんだよ。……やっぱりダメだ」 「大丈夫ですよ! だって、ミナさんのお陰でこんなに肩、軽いになりました。心もです。今日はよく眠れるかなぁと思います」  トゥイは笑った。そのまま着替え終え、荷物をまとめて更衣室を出ようとする。  その前に、水那はポケットから小さいものを取り出し、何やら呪文と息を吹き込めた。自慢の赤髪を数本引き抜きもしたようだ。 「トゥイ」  握らされたのは、真っ白なお守り。 「私の髪も入れといた。気持ち悪いかもしんないけど、寝る時も手放さないで。お願い」 「ありがとう――」 「何度起きろって言われても、絶対に朝まで起きないで。今まで通りにやり過ごすんだ」 「はい」 「後で連絡する。……またね、トゥイ」
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