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魔法使いはいる。
ただし数はとても少ない。全人口の1%程だ。
そして主に2タイプに分けられる。先天的にマナが使える魔法使いと後天的にマナを習得した魔法使いだ。
「ああもうっ!何度やってもできねぇ!」
高坂友貴(こうさか ゆうき)は今年14歳になる魔法使いの父と魔法使いの母の元に生まれた先天的にマナを使える方の魔法使いだった。
もうすぐ魔法学校の大きな試験である〈ソルセルリ〉を控えている。これは落ちれば即留年になってしまう恐ろしい試験だ。
試験課題は池の水を救い上げて一定時間なにかの形に留めるという水魔法“ウォタガ”だった。しかしこれが一向に上手くできない。
「なんでこんなにやってもうまくいかねぇんだ!」
友貴は池に魔法の杖を何回も振りかざし、そしてしまいには地面に叩きつけた。彼は焦っていた。
「大丈夫か?友貴。焦らずじっくりいこうぜ
。」
隣で友貴の練習を見ていた友達の藤田和男(ふじた かずお)は心配そうにそう話しかけた。
和男は友貴と違って両親は普通の人間で、7歳のときにマナを習得し、魔法学校の人に紹介されて魔法学校に入った後天的な魔法使いだった。しかし魔法の能力は友貴よりずっと上だった。今回の試験も和男ならなんなくこなすだろう。
「うるせぇよ!エリートのお前に俺の気持ちなんてわからねぇ!」
友貴は和男にそう辛く当たってしまった。
そしていたたまれなくなりその場から走り去っていった。
「友貴、、、。」
和男は悲しそうに友貴の後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。
昔はもっと仲良くできていたのに。いつからだろう。なんなく試験を通過する和男と要領が悪くなかなか試験をパスできない自分との間に心の距離を感じるようになっていった。それに先祖代々魔法使いで親からも魔法使いになるよう言われている自分と違って和男にはそんなプレッシャーはない。それが友貴からしたら和男がお気楽そうに見えて羨ましくまた嫉妬する要因でもあった。
魔法学校の学費は目が飛び出るほど高い。これで留年にでもなれば親からどんな罵詈雑言を浴びせられるかわかったものではなかった。
それにそれだけならまだしも留年が2回続くと魔法学校自体を退学させられてしまう。
(魔法使いになれなかったら俺どうやって生きていくんだろう、、)
友貴はそう考えると胃がキリキリ痛みだし、今日はもうさっさと眠ることにした。
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