46人が本棚に入れています
本棚に追加
日曜、夕方17時ーーー
明日が仕事という身の上なら いささかナイーブになる時刻、僕は自室のベッドで まどろんでいた。季節は春。日の入りが遅くなり未だ高い位置にある太陽の日差しを受けながら、壁に手を置いて 隣人に問いかける。
――― 今、なにをしてるんてすか?
別れ際は、淡々としていた。思いもよらぬ関係になった気恥ずかしさから無愛想になったのだが、帰る際は名残惜しくて「本当に連絡してもいいんですか?」と、念を押してしまった。すると、
「日にちが決まったら教えて下さい、待ってますから」
その言葉に胸を撫で下ろした僕は、こうして陽が傾くまで余韻に浸っていた。
身じろぎするたびに疼く痛みは、交わした愛の証。その幸福感と背徳感に板挟みになりながら、二度も三度も逢いたいと思う自分は、すっかり彼の虜。抱く方は遂げた瞬間に達成感を得て終止符が打たれるけれど、抱かれた側は体内に男の激情を残したまま燻り続けるのだから……
――― 用もないのにLINEなんかしたら、ウザがられるだろうな
そんなことを考えなから壁に置いた手を離した時、リビングから来客を知らせるインタフォンが響いて慌てて身を起こした。
――― もしかして?
が、解錠される音を聞くや否や肩を落とす。そう、一泊二日家を空けていた妻が帰って来たのだ。
夕食を食べて帰宅すると思っていた僕は、いつもより早い妻の帰りを疎ましく感じた。以前なら、そんな風に思わなかった。ただの【同居人】でも居ないと寂しいと感じていたはずなのに……
彼女は一旦リビングへ行き、夫がいないと分かると、寝室のドアをノックして「いるの?」と顔を覗かせた。
浮気して合わせる顔がない僕は掛け布団を頭から被り、今起きたと言わんばかりに「ごめん、寝てた」と呟く。すると、具合が悪いと勘違いした妻が部屋に入って来て「風邪でも引いた?」と、顔を覗こうとした。
最初のコメントを投稿しよう!