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「ねえねえ玲奈! 聖女魔界大戦Ⅱが出たよ! なんと今度のサブタイトルは『令和狸合戦タヌポン』! 相変わらず開発部、迷走してるね! でねでね、今回はかわいい金髪メス狸のお腹がニュータイプの絶対領域ってネット絶賛で……」
「はいはい、どーせまた脚本は南谷魔子でしょ?」
大学ゲーム研究会のソファで寝ていた私は親友の晴海のスマホを速攻で奪うと、アプリを秒で消去する。日本と異世界は困ったことに、いつだってリンクしているのだ。
「ノリ悪いなあ、玲奈……また週末に異世界RPGゲームで徹夜?」
「ゲームよりもうちょっとリアルな世界なんだけどねー」
「何それ新作3DVRゲーム?」
「ま、そんなとこ。三限の必修倫理、ノートあとでよろしくう」
結局、今回も日本に帰ったのは日曜の晩。冒険を短くしても、日本での三日消費に変化はないらしい。女子大生の貴重な週末休みを異世界冒険に奪われるのは、そろそろ勘弁願いたいのだが。
え、じゃあ週末休みに日本で何するかって? それはまあ、異世界アニメかゲームでしょ……
(でもね、ウォルフ……私は日本の狼が絶滅しちゃったのも、本当は悲しく思っているんだよ……)
大学には何とかたどり着いたが教室に行く前に再び睡魔にまどろまれ、私はソファで目を瞑る。
(だけど……寝る時はやっぱり毛むくじゃらの狼より……この子たちのふかふかお腹に限るのよ……)
そうして私はゲーム研のマスコットキャラ「タヌきち」「ポン子」のダブル抱き枕を抱いて、心地よい眠りの異世界に落ちたのだった。
(了)
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