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「私の最強魔法『聖なる精神の護り』に幻術は無力です。幻影もろとも私が浄化いたしますわ」
「俺たちパーティーの信頼は鉄壁だ。そして獣人ウォルフ様にも狸の幻術は効かねえよ」
「ウォルフにーちゃん、低級生物でバカだから効かないの?」
「そこは精神の強さと言えよアリス!」
「ふっ……そこまで言うなら、お前たちの仲間の信頼感とやらを幻影で試させてもらうタヌ」
狸王が懐から葉っぱを取り出して頭に乗せる。攻撃を予期してとっさに三人をかばったが、狸王が霧に包まれた後、姿を消した。
「逃げたの? 幻術っていうのは、ただのハッタリ?」
岩で囲まれた部屋に、また「ふぉふぉふぉ」と嘲笑が響く。
「お前たちはすでに幻術にはまっているタヌ。信じる仲間に裏切り者がいるタヌ。裏切り者を本気で斬るまで、幻術は解けないタヌ」
「まさか……狸王が仲間に化けた? 私たち四人のパーティーに?」
思わずパーティーを見回す。旅の仲間も、不安そうにお互いの瞳を見つめた。
私。ウォルフ。ピート。アリス。
そしてタヌきち。
子供だましのような術だ。私は思わず苦笑する。
「フ……狸王の幻術とは、この程度ですか? 聖女も甘く見られましたね」
「くだらん術だな。ウォルフ様の目にも、増えた狸がバッチリ見えているぜ」
「全部で五人。誰一人増えていないわ。ねえ、タヌきち」
「その通りタヌ!」
「……ちょっと待てレイナ嬢。お前、完全にタヌキに化かされてないか?」
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