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幻影城の攻略に出る前、宿屋で長方形のテーブルに二人ずつ向かい合って、四人で最後の朝食を囲んだ。だけど、その記憶が霞に掛かったように茫としている。そこにいたのは誰……?
「よしよし、その調子だ。次に誰がどこに座っていたか、一人ずつ言ってみろ」
「私は窓際の左、聖壇の前よ。並んだ右隣は……ピートだったよね?」
「うん。そして僕の正面にいたのは……ええと、アリスだ」
「アリスの右はウォルフにーちゃんだったー」
「そうそう、俺がレイナ嬢の前。これで四人」
「と、いうことは……」
全員の疑いの視線が、タヌきちに注がれる。
「た……タヌきちを疑ってるタヌか?」
「他に座る場所はねえからなあ。覚悟して斬られろや、タヌキ野郎」
ウォルフが剣を抜く。
「た……タヌきちは……」
青ざめたタヌきちが叫んだ。
「ええと……お、お誕生日席だったタヌ!」
「だよねー!」
私とピートとアリスの声がハモった。
「五人でおいしく朝食いただいたよねー」
「あれえ? 記憶の人数増えてませんかあ???」
「いいも何も、最初から五人でタヌきちはお誕生日席よ。それでタヌきちの正面は妹のポン子よね?」
「うん、ポン子だったポン!」
「タヌキまた増えてる! 絶対変だろ、六人って!」
「何言ってるのウォルフ? 聖女は『聖なる精神の護り』で幻影から守られているの。最初から六人だって、さっきから言ってるじゃない」
「何言ってるかわかってねえのはお前だレイナ嬢! 聖女が完全にタヌキの術中じゃねえか! 『聖なる精神の護り』って、どんだけ破れ鍋ザル魔法なんだよ!」
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